市販の薬を利用してよいか?

最近では、薬局でも「ドリエル」、「ネオディ」
などの睡眠薬をはじめ、精神科関係の薬が
何種類か売られるようになりました。

また、「気分が落ち込むとき」あるいは
「不安なとき」などに効くとされる漢方や
市販の薬も売られています。各職場の健康診断をまわっているときに、
このような市販の精神科関係の薬を
服用している人が多いことを知って
驚いたものです。私も、出回っている市販の睡眠薬、
抗うつ薬、抗不安薬の成分を可能な
限り調べたことがあります。

その結果、病院から処方する薬に比べて
その成分は全て弱く、安全性の面では
問題ないことが分かりました。

しかし、うつ病、睡眠障害を改善させる
ためにはやはり弱すぎて気休め程度にしか
なりません。

それにもかかわらず、その薬を飲まないと
眠れないとか、気分が乗らない、とか
変な意味で薬に依存してしまっている
人が多いのには考えものです。

「ドリエル」という睡眠薬を飲んだにも
かかわらず、寝つきが悪くてイライラして
夜を過ごす人も大勢います。

また、市販の薬をいったん飲み始めてしまうと、
その薬をやめていくタイミングが自分でわからず、
結局いつまでも飲んでいるということに
なりかねません。

病院で処方する薬も、いつまでも飲んでいただく
ものではなく、時期がきたら、タイミングよく減薬し、
中止していきます。

結論を申し上げると、自分でうつ病を治す場合、
市販の薬の助けは一切借りてはなりません。

また、最近では、「気を高める」とかまことしやかに
宣伝している漢方もたくさんありますが、
それらに手を出すのもやめましょう。

それよりも、これまでにご紹介してきたことを
守って堅実な日常生活を送っていくことの
方がうつ病治療には大事です。

アルコール、タバコとの付き合い方

うつ病の治療中には、お酒、タバコは
やめた方が良いのか、という質問を
よく受けます。

結論から言うと、アルコール依存症を
合併していない限り、断酒の必要ないですし、
また禁煙の必要もありません。実際に試みたことがあればお分かりかと
思いますが、今まで嗜んでいたアルコール、
タバコを一切やめることは、
非常に難しいことなのです。

まず、断酒、禁煙を貫くことに
膨大なエネルギーを使ってしまいます。

うつ病の時はただでさえ、エネルギーが
低下しているのに、断酒、禁煙によって
さらにエネルギーを消耗してしまう
ことになります。

私が厳しく指導するのは、お酒を飲んだ直後に、
抗うつ剤や睡眠薬を飲んでいる人に対してです。

アルコールを摂取したら薬を飲むまで2時間ほど
間をおかなければなりません。

しかし、薬を飲まずに自分で治療している場合には、
そんなことを心配する必要はありません。

ただ、うつ病を自分で治すためには、このアルコール、
タバコに関しても守るべきポイントがあります。

まず、アルコールですが、飲む時間帯は
夕方6時以降とします。
夕食の時でもかまいません。

それ以前ですと、脳がまだ賦活しようとしているので、
お酒を飲むことによってその脳を無理やり
沈静させてしまい、うつ病が治るのを抑えつけて
しまうことになります。

お酒によって高揚した気分になるのは、あれは錯覚です。

お酒により、理性を司る大脳新皮質の活動が抑制されて、
本能、情動主体の大脳辺縁系の活動があらわになるから
です。

しかし、お酒が抜ければ、眠らされていた大脳新皮質が
目覚めて、その時、ガクッと脱落感を覚えることに
なります。

うつ病を治すということは、脳の表面、大脳新皮質の
働きを正常に戻すことも必要なのです。
次にタバコですが、ニコチンの精神安定剤的
な作用をうまく利用する方法があります。

それには、交感神経を賦活させた後、つまり
何か頑張ったあとに吸うのです。

朝の散歩後、食後、ちょっとした作業した後、
つまり自分でちょっと動いた、頑張ったなと
感じた後に、ご褒美の意味で吸うタバコは非常に
おいしいものです。

人間は、活動、攻撃主体のの交感神経系と
休息、消化主体の副交感神経系を交互に
バランスよく働かせると精神的にも肉体的
にも安定します。

朝起きた直後や食前、入浴後などのタバコ
がおいしいという人もよくいますが、
これはリラックスして副交感神経系が
働いているときなのでやめましょう。

うつ病の精神症状

うつ病の基礎知識

うつ病は気分の障害を基本症状とする精神障害ですが、
症状には体の不調を訴える「身体症状」と感情面に現れる
「精神症状」の2つがあります。

ここではうつ病の「精神症状」にはどのようなものがあるのかを紹介します。

うつ病は「気分の障害」とされます。

気分は時々の状況で上向きになったり、沈んだり変化します。

しかし、うつ病になるとこうした喜怒哀楽の変化は起こらなくなります。

「精神運動の停止」はうつ病のサイン

人の気分は、意識的に起こすものでなく、自動的に起こり、変化します。

うれしいことがあればよい気分になり、嫌なことがあれば悪い気分になります。

このような「気分」は自律神経が調整しています。

うつ病になるとこうした気分の変化が起こらなくなります。

うつうつとした気分に支配され、よい出来事があっても楽しくならず、
うつうつとした気分が続きます。

このように心が思うように動かずブレーキをかけられているような状態を
「精神運動の制止」と言い、うつ病の主症状のひとつでもあります。

この精神運動の制止は当然、日常生活にも大きな影響をきたします。

代表的なものとしては、思考の停止や意欲の停止があります。
以下で、うつ病の代表的な精神症状を紹介します。

うつ病の代表的な精神症状7つ

うつ病と考えられる7つの代表的な精神症状を紹介します。

やる気が起きない

意欲が低下し、何をするのも億劫になります。
人と話すのが面倒になり、引きこもりがちになります。
さらには、入浴や歯磨きといった日常生活において当たり前のことも面倒になります。

憂うつになる

理由もなく悲しくなったり寂しくなったりといった、うつうつとした状態が続きます。

イライラ

思考や意欲が低下する一方で、心の中では「~しなければ」
といった焦りが起こっています。
心理的な急き立てにより、イライラといった症状も現れやすくなります。

判断力の低下

うつ病になると脳が機能低下を起こすため、判断力がなくなります。

仕事に優先順位がつけられなくなり、
簡単な仕事から手をつけるようになります。

その結果、重要な仕事ほど後回しになり、やがては業務に支障が出てしまいます。

思考力の低下

うつ病になると、思考力が低下します。
まず、新聞の経済面といった硬いものが読めなくなったり、
読んでも頭に入らず、同じところを何度も読む、といったこともあります。

無感動

感情の中枢が機能低下を起こすため、
趣味や関心ごとが楽しいと感じられなくなります。

放置すれば、最終的にはまったく感情の動きがなくなってしまいます。

集中力がなくなる

うつ病により記憶力や集中力が低下すると、
料理など集中力を必要とする作業が難しくなり、
メニューにバラエティがなくなって、
最終的には料理が作れなくなってしまいます。

身振りや話し方がゆっくりになる

うつ病では脳の機能低下により、思考速度が鈍くなり、
時には停止してしまう場合もあります。

その結果として、身振り手振り、話し方がしだいに緩慢になっていきます。

よくつまずく。階段を踏み外す

うつ病では五感の働きを中心とする感覚認知機能が低下するため、バランス感覚が鈍くなり、左右によろける、つまずくなどの症状が出てしまいます。

記憶力の低下

脳の記録力が低下しているために起こる症状です。

毎日毎日トイレットペーパーを買ってくる、
しまった場所を忘れてしまうなど。

認知症の初期にも見られる症状です。

自分は無価値だと思う

うつ病の一般的によく知られた心理状態です。

うつ病は複雑な思考ができなくなるため、
ものごとを単純に考えようとします。

白か黒かでしか考えられなくなるので、「自分は無価値だ」とか
「死んだほうがよい」となってしまうのです。

うつ病が治らない・くりかえすのはなぜ?どう対処すればいい?

うつ病の完治には時間を要します。

また、治ったと思っても再発することもあり、
治療期間が数年にわたることも少なくありません。

ここでは、うつ病が長引いたり再発したりする原因や
そういった際にどう対処すべきかについてまとめています。

うつ病は、きちんと治療を受ければ必ず治る病気です。

しかし、風邪のように「薬を飲んで熱が下がったから治った」と
簡単にはいきません。

個人差はありますが、半年~1年程度は治療を行うケースが多くあります。

なぜうつ病は長引くのか、また、どのような対処をすればよいのか、詳しく解説します。

うつ病が長引く・再発する原因

うつ病の治療には、薬を飲みながら病状を取り除いていく「急性期」と、
社会復帰に向けて以前までのペースを取り戻していく「回復期」があります。

薬物治療を行う「急性期」の間、患者は薬を飲み、
様子をみながら治療に励みます。

この時期を過ぎると、回復期に入るのですが、
この時期、病状は大きな波を描くように、
よくなったり悪くなったりをくりかえします。

このよくなった時期に「もう大丈夫だ!」と自分の判断で薬を飲むのをやめて、
社会復帰しようと考える人が少なくありません。

しかし、完全に回復したわけではありませんから、
再び抑うつ状態に入り、結果、うつ病が長引いたり、
再発させたりしてしまうのです。

長引かせない対処法・予防策

うつ病の治療中は、症状が改善されてもすぐに服薬を止めず、
しばらくは抗うつ薬を飲み続けることが大切です。これを「維持療法」と言います。

うつ病の患者は、早く社会復帰したい、早く治したい、と
強く思うものですが、うつ病から回復するには時間がかかるのが一般的です。

それを念頭に置き、焦らずじっくりと治療に向き合うことがなによりも大切です。

焦って無理をしたり、服用を止めたりすると、
症状がかえって悪化してしまったというケースが少なくありません。

再発を防止するにも、抗うつ薬を服用し続けることが重要です。

うつ病は2~3年以内に50~80%が再発するといわれているほど
再発率の高い病気です。

いったん症状が落ち着いたと感じても、
自己判断で服用や治療を中止しないようにしましょう。

うつ病治療では、周囲のサポートも欠かせません。

家族なら「本人がいちばんつらい」ということを理解して
本人がじっくり休養できる環境を整えてあげましょう。

職場の方なら、ゆっくり復帰していけるよう、仕事内容に配慮してあげてください。

うつ病の回復は一進一退です。

たとえ病状が再発しても治ることを信じて、
「あせらず」「あせらせず」の気持ちでいることが大切です。

うつ病を再発させない!知っておくべき再発防止策

長く続く重度のうつ病の症状と対処法

治療が順調に進み、通常の生活に戻っても油断は禁物です。
うつ病は再発率のとても高い病気なので、
今度は再発を防ぐ治療法に切り替えなければなりません。

再発予防で知っておきたいことを紹介します。

うつ病は再発率の高い病気です。

治療が順調に進み、「もう治った」と感じられる回復期に入るころが
一番危険だといわれています。

うつ病の再発を防ぐ重要性

うつ病は、特に再発に注意が必要な病気だと言えます。

症状が強くでる急性期が終わり、回復期に入って
症状が徐々に改善していくと、強い「自殺念慮」に支配されてしまうことがあります。

いったん症状が軽くなり気持ちが安らぐと同時に、
「もうあんなつらい目には遭いたくない」と再発を恐れて
「この世から消えてしまおう」という衝動に駆られてしまうのです。

そのため、回復期は再発リスクを下げるための治療が欠かせなくなります。

うつ病の多くは、病状が回復に向かったとしても
2~3年以内に半数以上が再発するといわれているほど、
再発リスクの高い病気です。

再発すると、以前よりも病状が重くなり、
薬の量を増やさなければならなくなる人もいるので、
再発を予防することはうつ病治療において大変重要なのです。

うつ病の再発を防ぐには

うつ病の再発を防ぐ方法を紹介します。

維持療法で予防する

「維持療法」とは、病気が治った後も薬による治療を継続することです。

うつ病の場合はある日突然服用を止めるのではなく、
段階的に減らしていくことになります。

服薬期間は、1~2年です。重症、慢性化している人は数年かかる場合もあります。

認知をコントロールして予防する

うつ症状を起こしやすくしている思考パターンを変えていくことも大切です。
たとえば、自分の抱えこんだ仕事を見て「こんなに処理できない」と悩むのではなく、
「できないところは誰かに手伝ってもらう」と考え方を改めることで、気分も変わってきます。

不眠に注意する

夜眠れない、夜中に何度でも目が覚めてしまう、
などの不眠の兆候があらわれたときは注意しましょう。

うつ病再発のサインかもしれません。

周囲のサポートも大切

家庭なら再発リスクをきちんと理解し、生活リズムを安定させ、
規則正しい生活をおくらせる、会社なら仕事量を調節する、
仕事を抱えこませない仕組みを作るといったことで、
患者がストレスを抱えこまないように

周囲がしっかりサポートしてあげることも、再発予防には大切です。

長く続く重度のうつ病の症状と特徴、対処法

長く続く重度のうつ病の症状と対処法

うつ病は治療せずに放置しておくと、
悪化して重度のうつ病になってしまう可能性があります。

重度のうつ病になると、どういった症状が現れるのでしょうか。
重度のうつ病の特徴や、重度のうつ病になったときの対処法を紹介します。

うつ病は人により症状の出方もさまざまで、
軽度のうつ病の人もいれば重度のうつ病の人もいます。

ここでは、重度のうつ病について、その症状や特徴、対処法を、
うつ病の重症度チェックリストとともに紹介します。

重度のうつ病とは?

治療をせずに放っておく、または、
治療を受けていたとして通常の治療法がまったく役に立っていない時、
うつ病の症状は悪化していきます。

重度のうつ病の場合、気分の落ち込み、食欲不振、睡眠障害などの症状ほかに、
もっとも特徴的なものとして「自殺願望」が起こります。

長期間続いた抑うつ状態が自尊心の喪失を招き、
「この世から消えてしまいたい」という思考状態に
陥っている場合が少なくありません。

また、重度のうつ病には、妄想、幻覚のような精神症状を伴う場合もあります。
どちらにしても非常に危険な状態と言えます。

うつ病の重症度セルフチェック

ここでは、うつ病の重症度が確認できるセルフチェック方法を紹介します。

うつ病の重症度をチェックする方法はさまざまありますが、
ここではICD-10を紹介します。

これはWHO(世界保健機構)が設定したうつ病の分類表で、
うつ病を「軽症うつ」「中症等うつ」「重症うつ」の3つに分類します。
日本の精神医療の現場でも採用されている評価方法です。

次の質問の当てはまる項目にチェックを入れてください。

典型的な症状

□1 ほとんど1日中憂鬱で沈んだ気分である

□2 仕事や趣味、対人関係などに興味や喜びを感じられない

□3 疲れやすくなった。活動性が低下した

そのほかの症状

□4 集中力や注意力が低下している

□5 自分はだめだと思う、自分に自信がない

□6 「悪いのは自分だ」という罪悪感や、「自分は無価値だ」という思いにとらわれる

□7 将来に希望が持てない

□8 自殺したいという思いにとらわれる。自傷行為をしたことがある。

□9 不眠(まれに過眠)がある

□10 食欲が低下する(まれに増加)している

判定方法

設問1~3で2つ、4~10で2つ当てはまる項目があり、それが2週間以上続く

=軽症うつ

設問1~3で2つ、4~10で3つか4つ当てはまる項目があり、それが2週間以上続く

=中等症うつ

設問1~3で2つ、4~10で5つ以上当てはまる項目があり、それが2週間以上続く

=重症うつ

もちろん、この結果だけでうつ病の重症度を診断することはできませんが、
点数の高かった人は、早々に診断を受けることをおすすめします。

重度のうつ病になったときの対処法

重度のうつ病は、薬物治療や精神療法など、
一般的な治療法では改善できない状態と言えます。

「この世からいなくなりたい」などの自殺念慮を持ち、
治療にも長い時間がかかるので、
周囲のサポートも欠かせません。

入院させるなどの処置も考えなければならないでしょう。

うつ病を放置すると・・・

うつ病を治療しないで放っておくと、どうなるのでしょうか?

治療しないと他の病気と同じように、
うつ病の症状も次第に悪化していきます。

そして、状態が悪くなってから治療をはじめても、
治療の成果がなかなか上がらず、
治療の期間も長くなってしまいます。

また、うつ病はきちんとした治療をしないと、
今は何とかふんばって仕事を続けていたり、
家事をすることができていても、

徐々にからだを動かすのが億劫になったり、
自分の殻に閉じこもって、
仕事に行けなくなったり、
日常生活や人間関係にも

さまざまな支障をきたすようになります。

うつ病は、放っておいても
気のもちようで治るというものではありません。

よく気合が足りないからだとか
頑張っていないからとか
やり方が悪いなどと
責められたり自分自身で思ったりしますが

うつ病は明らかにそんな気分的なものとは
違います。

自分の病状に早く気づくことが大事です。

うつ病症状の進行

うつ病も他の病気と同じように、治療せずに放っておくと
徐々に悪化していきます。

ですから、症状が軽いうちにうつ病に気づき、
治療をはじめることが大切です。


気分の落ち込みがあらわれる少し前に、
生活の中で楽しみを感じなくなった、何をしてもおもしろくない、

日常生活のさまざまなことに興味を失った、集中力がなくなってきた、
物事の決断ができなくなったなどの
症状のきざしがあらわれることがあります。


うつ病が進行すると、日常生活にもさまざまな支障をきたすようになります。

例えば・・・
「スーパーに買い物に行っても、何を買ったらよいのか決められない」
「パソコンの電源を入れるのが面倒でいやだ」
「掃除、洗濯、料理をするのが億劫だ」
「部下からの書類に判を押してもよいのか決められない」
「さびしくて誰かにそばにいてほしい」など、仕事や家事の能率も上がりません。 

ひどくなると、動作が鈍くなり、
ゆっくりとした動きになったり、逆に強い不安、
焦燥感からイライラと足踏みをしたり、

ソワソワと落ち着きなく動き回ったりすることもあります。

仕事の能率が上がらないのは自分のせいだと自分を責め、

さらに落ち込みます。

その結果、自分に自信をなくして
仕事をやめてしまったり、ひとりになりたいために
離婚してしまったりします。

もっと悪い状態になると、
うつ病の症状によるつらさから、
いっそこのまま消えてしまいたい、

死にたいと思うほど追いつめられてしまうこともあります。


これを希死念慮といいます。

うつ病と抑うつ気分の違い

 

気分の落ち込みや、やる気が起きないなど、
こころの不調は誰もが経験するものです。


このような気分の落ち込みと、

うつ病の違いを見分ける1つのポイントは、
「どのくらい長く気分の落ち込み(抑うつ状態)が続いているのか」
ということです。


ちょっとした気分の落ち込みなら、2、3日もすれば回復しますし、

カラオケや飲み会などで気晴らしをすれば、
憂うつな気分が吹き飛ぶこともあります。

 

しかし、うつ病では憂うつな状態が2週間以上も続き、
何をやっても「気が晴れる!」ということはありません。

 

うつ病と抑うつ気分の違い

うつ病(DSM-5)/大うつ病性障害* 抑うつ気分
症状 強い 弱い
妄想 妄想的になることがある 現実からずれない
自殺 考えることがある 比較的まれ
日常生活 大きく影響され変化する それほど大きな影響はなく変化も少ない
状況からの影響 よいことがあっても気が晴れない よいこと、楽しいことがあると少し気が晴れる
きっかけ 多くはきっかけがあるが、はっきりしていないこともある はっきりとした誘因がある
周囲から見て 理解できないことが多い 理解できることが多い
持続性 長く続く 徐々に軽くなる
抗うつ薬 よく効くことが多い 効かないことが多い
仕事・趣味 まったく手につかない やっていると気がまぎれる

うつ病 心理面の症状

物事が思ったように進まないときには、
気持ちが落ち込んだり、腹が立ってイライラしたり、
不安で眠れないことがあります。

こうした心理面での症状があるからといって、
「こころの病気」とは限りません。

 

このような症状が長く続いたり、
生活するうえで支障が大きい、
つらくて苦しいといった場合は、
早めに対応することが大切です。

 

気持ちがしずむ、楽しいことがないのではどうしてですか

「気分が沈む」「気分が重い」「憂うつだ」などと
訴えられる症状を、精神医学では抑うつ気分と呼んでいます。

 

「何をするのにも元気がない」というのは
意欲低下と呼ばれます。


精神科医は、患者さんの状態からどのような症状があるかを診て、

現在どのような状態(これを状態像といいます)であると
考えるのがよいかを評価します。

 

「気分が沈んで、何をするのにも元気がない状態」は、うつ状態といわれます。

 

まず、うつ状態の原因となる病気にはどのようなものがあるかを検討します。


何かショックなことがあった時、

多くの人はうつ状態を経験しますが、
精神医学ではこれを最初に考えません。
大きな病気を見落とさないように、
うつ状態を起こす病気を一定の順番で考えていきます。

 

うつ状態はすべての精神科の病気で起こりうるものですから、
診断のためには、この症状以外にどのような症状があるかを
慎重に問診することが重要です。

 

 

自分の具合が悪い時にはどうしたらいいですか

うつ状態というと環境のストレスを考えがちですが、
体の病気や薬が原因だったり、
ストレスに対する対応を考えるよりも
抗うつ薬による治療を優先させたほうが
よかったりするようなうつ病もあります。

まず一度は専門家に相談することをお勧めします。

 

自分で「ふだんと違う」と感じる状態が1週間程度以上続いたら、
早めに精神科や心療内科などの専門医を受診したほうがいいでしょう。

 

身近にいる人が具合の悪いときはどうしたらいいですか

 

まず専門医にかかることをすすめてよいと思います。
専門医のアドバイスを受けるまでは、
できるだけ患者さんの負担にならないような、
あるいは気持ちが少しでも楽になるような接し方を工夫してください。

 

自宅の近くにどんな病院があるのか、精神科と心療内科、
どちらがよいのかなど、わからないようであれば、
かかりつけの内科医をまず受診して、
その医師から専門医を紹介してもらうのもひとつの方法です。

 

どうしても病院に行きたがらない方もいます。

その場合、食欲がない、だるいなどの体の症状について内科医受診をすすめ、
そこから専門医につなげる方法があります。

 

「あなたは病院に行かなくても大丈夫というけれど、
家族としては心配でしかたがない。
家族の心配を減らすためでもいいから、医師の判断を聞いてほしい」

のように、家族が本当に心配していることを
率直に患者さんに伝えることが受診につながることもあります。

 

うつ病の方を支える家族や周囲の方の気遣いが大変なことは
言うまでもありませんが、とくに適切な治療が始まるまでの心労は
非常に大きいものです。

患者さんをとりまく人が頻繁に話し合い、
力を合わせることもとても大切です。