うつ病の診断
うつ病は、それが病的なものなのか、
日常的に性格的にきているものなのかを
しっかり区別しなければいけません。
うつ病の3大症状は、
「おっくう感」「憂うつ感」「不安・焦燥感」があげられます。
しかし、これらの症状は、
普段からちょっと疲れたときなどに
「だるくて、何をするのもおっくう」だとか、
梅雨のじめじめした時期などには
「憂うつな気分」になるなどと、
当たり前のように使われている言葉でもありますよね。
実際に「うつ病」でなくてもそのように感じることが
人間ならありえることでしょう。
このことから「うつ病」と診断をすることは非常に難しいのです。
また、不安・焦燥感などは、「元々心配性な性格だから」と
いうことで、簡単に片付けられることもあります。
うつ病の3大症状が、全て現れる場合もあれば、
「不安・焦燥感」や「憂うつ感」だけが顔をのぞかせることもあります。
また、精神的な部分だけでなく、
身体的にも「うつ病」の症状が現れることがあります。
体に現れる特徴で、最も多くみられるのは、「全身倦怠感」です。
とにかく疲れやすくだるいといった症状です。
次によくみられるのは「睡眠障害」です。
寝つきがよくても夜中に何度も目が覚めたり、
明け方になると目が覚め、朝までゆっくり
眠れなかったりというような睡眠に対しての障害がでてきます。
うつ病の睡眠障害に関して共通して言えることは、
「目覚めたときに、なんともいえない憂うつ感を感じる」
ということです。
また、うつ病になると、「頭痛」や、「胃の不快感」といった
症状が身体的に現れます。
それらの症状から、内科を受診しても
原因不明だといわれた場合は、
「うつ病」を疑ってみることが必要だといえるでしょう。
うつ病は、内臓疾患や、外科的なケガなどの診断や治療とは違い、
内科的な検査の結果に現れる数値で判断できるものではありません。
「いつから、どのような症状が現れているのか」を
詳しく問診し、客観的に患者をみて、
その様子から「うつ病」と診断していくものなのです。
もちろん、うつ病か、内科的病気なのかの
診断を判断するのは大変難しいものがあります。
診察をする際には「おっくう感」や「憂うつ感」が
いつから続いているのか、睡眠障害の有無や
食欲の有無などを診ていきます。
受診に際し、家族が同行している場合は、
家族から見て、どのような変化があるのかを
充分話を聞き、診断の参考にします。
身体的な不調、胃の痛みや頭痛などの
身体的不調が強い場合は、内科的な疾患なのか、
精神的なうつ病なのかを的確に診断するために、
必要に応じて、血液検査やレントゲン、その他、内科的な検査を行います。
医師の指示に従い受けて、内科的な病気がないかを
決定つけてもらい「うつ病」の治療に
取り掛かるのが万全だといえるでしょう。
また、内科的な病気の中にも、うつ病とよく似た
症状が出る病気があるので、その病気との診断を
間違わないようにすることが必要です。
うつ病の診断には、本人の申告が重要です。
しかし、本人がそれほど「うつ病」と感じないで、
「自分の性格的な問題だから」などと片付けてしまう
ケースも多いのが現状です。
いつも患者本人と接している家族からの
客観的にみた様子も診断には非常に大切です。
うつ病の症状として、体に現れる最もよく見られる症状は、
睡眠障害、疲労感、倦怠感、首や肩のこり、頭痛 がしたり
頭が重かったりという症状が体に現れます。
また、精神的な症状としては、
今まで意欲的に活動していたものに意欲がなくなる
すごく興味があったものに無関心になってしまう
会社でバリバリ仕事をこなしていたものが、仕事の効率が極端に悪くなる
家事をするのも億劫になったり何をするのにも気分が乗らない
何もないことに関してすごく不安を感じる
などが、うつ病の症状として見られます。
しかし、うつ病の患者さんが、自分で精神症状を
訴えてくることはほとんどないと言ってもいいでしょう。
体に現れる「睡眠障害」や「疲労感」などは、
比較的に患者さん自身も気がつきやすい症状です。
しかし「抑うつ状態」「意欲の減退」「不安」などという
精神面での症状は、医師から指摘されない限り
患者さん自身が気づくことはほとんどありません。
症状を自覚している人はうつ病の中でもほんの
数パーセントにしかいたらないのです。
しかし、医師が質問すると、
80パーセントから90パーセントの人が
「そういえば・・・」と医師が聞けば答えるそう。
しかし医師が聞かなければ答えないという
患者さんの「認知障害」を明らかにしていることなのです。
「認知障害」は自分が「アルコール依存症」である
患者さんにも見受けられるように、
さまざまな症状のうちのごく一部しか
医師には訴えないで診察を受けるということ。
「うつ病」ということの診断の決め手を
難しくしている大きな要因になるのです。
「うつ病」の症状は、ほんとうに多種多様で、
風邪引きのように「頭痛がする」「鼻水が出る」「喉が痛い」
と一般的に知られているようなものだけではありません。
「まさか、こんな症状が「うつ病」につながっていたとは・・・」
と思うような症状が体に現れることもあります。
例えば、先にあげた肩こりなどももちろんですが、
体に如実に現れる症状として、
食欲不振、吐き気、動悸、体重の減少、腹痛、
腹部の不快感、めまい、胸部の不快感、腰痛、
下痢、性欲減退、呼吸困難などがあります。
「うつ病」とは無縁で、ともすれば内科的な病気を
疑うようなものが、実は「うつ病の症状」にあげられています。
「うつ病」と体に起こる症状の関連が意外に知られていないので、
「うつ病」との関連を考えずに、長年違う治療を受けてしまうこともあります。
やはり、このような体に症状が現れている場合、
誰しも「心の病」などと考えることもなく、
内科を受診してしまうのは、
ごくごく一般的なことだといえるでしょう。
内科や、その他の一般的な科を受診して、
各種色々な検査をしても結局のところ
何も見つかることはない場合、
「心因性のものによる」
「ストレスから来るもの」
として様子をみてくださいといわれてしまいます。
症状を抑えるためだけの薬が処方される結果となってしまい、
「うつ病」そのものに対しての治療は
一切されないままで終わってしまうことになってしまいます。
そうなると、いっそう「うつ病」が進行し
慢性化したり深刻化してしまいます。
体に出た症状が内科等で改善されない場合、
「うつ病」をもっとよく知る必要があるといえるでしょう。
「うつ病」の身体症状は比較的医師に質問されると、
患者側から訴えやすいものです。
しかし、精神的症状は、患者側からすれば
「言いたくない」「言いにくい」状態に
あることも考えておかねばなりません。
「人間関係を避けるようになった」
「仕事の効率が低下した」などというのは、
患者側からは訴えることはまず考えられません。
身体的症状に反し、精神的な症状は、
「ストレス」という大きなくくりになり、
患者側も「うつ病」にかかっているという
自覚症状は無いに等しいと考えていいでしょう。
うつ病の症状で「ストレス」という言葉を
何度も繰り返し使ってきましたが、
うつ病の症状が知らず知らずのうちに進行していくと、
「悲観的な考え方」から抜け出せなくなってしまいます。
「悲観的な考え方」というのは、
どうしても前向きな考え方ができなくなってしまう、
悪い事態に陥ったことばかりと考えてしまう状態になってしまうのです。
また、悪い状態の物事しか眼に入らなくなってしまうのです。
自分の未来に何も明るい希望が見えなくなり、
自分には何も自信を持つことができなくなってしまう
ネガティブな考え方から抜け出すことができない状態に
陥ってしまいます。
例えば、
「こんなに頑張ったのだから、一息入れて温泉にでも行って気分転換をしてみよう」
「これまでは頑張りすぎたのではないだろうか?
少しゆっくりと時間をとって自分を癒してあげよう」
などという発想の転換ができなくなってしまいます。
自分の考えに柔軟性がなくなり、
悲観的な方向へと自分の考えが進んでしまいます。
自分の周りに起こっている物事を多方面から見ることが
できない状態にいろいろなうつの症状が
発症するといってもいいのではないでしょうか。
なにか「心のサイン」や「体のサイン」が出ている状態ならば、
おっくうがらず、また恥ずかしがらずに、そして何より、
うつ病ではないのかと感じた家族が、理解者となって
専門医の診察を速やかに受診するのが一番いいでしょう。
それが、やはりうつ病の解決への第一歩だといえるからです。