いわゆるマタニティブルーと同じと
勘違いしている人が多いですが、
産後うつ病は、うつ病と同じく
治療すべき疾患です。
妊娠中は、胎盤からプロゲステロン(黄体ホルモン)
やエストロゲンなどの複数のホルモンが分泌され、
出産直前にピークに達します。
その出産の時に胎盤も排出されます。
これまで多量のプロゲステロンを産生
していた胎盤がなくなるのですから、
視床下部はこのホルモン調整に向けて
再度活動を始めます。
今まで出されていたホルモンがなくなり
バランスを整えていくのは、身体にとって
非常に大変なことなのです。
いわば、マタニティブルーは、このホルモン
調整の時期に該当します。
ただし、大抵産後1週間でおさまります。
一方、産後2週間経過しても落ち込んだまま、
あるいは日に日に抑うつ気分が
激しくなっていくときもあります。
この場合に初めて「産後うつ病」を
疑います。
もちろん、ホルモンバランスが整うまでの
期間は個人差があり、まだホルモンが変動
していることも大いに考えられます。
しかし、気分の落ち込み、イライラ、子育てへの
不安感、などでは済まされない症状が出てきます。
赤ちゃんに生活が束縛されることに憤りを感じる、
オムツを変えたり、授乳を進んでやる気にならない、
子育てするぐらいなら死んでしまいたい、
と感じる、など症状は多彩です。
大概、ご本人かご家族が困り果てて受診してきます。
症状から、抗うつ剤などを必要と判断すれば、
授乳は一切中止していただいて、薬の調整を
行います。
場合により入院などで一日中赤ちゃんと向き合う
日々から解放します。
赤ちゃんへの虐待に至っているケースもあります。
母親になること、子育てをしていくこと
などについて環境調整、および精神療法を
行っていきますが、このやり方は個々の
患者さんにより違ってきます。