うつ病の前兆の状態

① 楽しみや喜びを感じない

通常なら楽しかったようなことでも、
楽しみや喜びを感じなくなります。
何をしていても憂うつな気分を感じてしまいます。

② 何か良いことが起きても気分が晴れない

きっかけとなった出来事や要因が解決したり、
自分にとって良いことが起こっても、
気分が晴れない状態が続いてしまいます。

③ 趣味や好きなことが楽しめない

健康な状態であれば、嫌な気分のときに大好きな
趣味のテニスで思いっきり汗を流したりすることで、
気分が晴れたりするものです。

うつ病になっていると楽しめないどころか、
疲労感ばかりが増してしまいます。

 

うつ病はこうした症状が2週間以上継続する状態をいいます。


早い時点で自覚できれば、発症を未然に防げる可能性も高くなります。

ただ、こうしたうつ病を代表とするメンタルヘルス疾患は
生活習慣病にもたいへん類似しており、


日々生活をしている中で、なかなか自覚しにくいという

難しい点があるのも確かです。

 

そんな中で、自覚しやすい症状に注目するという考え方があります。

そもそも生命体にとって、たいへん大切なものがふたつあります。

ひとつは食べること。

エネルギー補給です。

そしてもうひとつが、エネルギー充電である睡眠です。

 

「疲れているのに眠れない」となると、
充電は底をつき自然治癒力が減少し不健康な方向へ進んでしまいます。

 

最近では、現在不眠がある人は不眠のない人に比べ、
3年以内にうつ病を発症するリスクが4倍になるなど、
不眠とうつ病の関連性を示す研究報告が多く、注目されています。

 

睡眠に注目する利点は、自覚しやすい点です。

 

寝つきに30分以上かかる、途中で何度も目が覚める、
朝やたら早く目が覚める、熟睡感がなくなる、などに気がついたら、
まずは生活習慣を見直してエネルギーが底をつくのを防ぎましょう。

 

具体的には、仕事の仕方を再検討する、

就床前4時間のカフェイン摂取を避ける、


ぬるめのお湯での入浴や音楽などでリラックスする、


目覚めたら日光を取り入れる、

趣味など自分のための時間を確保する、

休日の過ごし方を工夫する、などがあります。

 

 

新型うつ病について

従来型の典型的なうつ病とは印象が違う、新しいタイプのうつ病のこと。
仕事中だけうつで、職場を離れると活動的になるなど
自己中心的に映るため、
周囲が対応に苦慮する場合も少なくありません。

 

職場ではうつでもプライベートでは活動的
わがまま”に思えても対応は慎重に

 

うつ病が社会に蔓延しています。
厚生労働省の調べによると、うつ病、躁うつ病などの患者は

ここ10年ほどの間に2倍以上に急増。


診療施設は増えているものの追いつかず、

パンク寸前のクリニックも少なくありません。


背景には、病気に対する啓発が進み

精神科への抵抗が薄れたことや、
企業のメンタルヘルス対策が普及したことなどがありますが、
新型うつ病の患者が増えていることも一因だといわれています。

 

うつ病というと、
周囲の状況に関係なく慢性的に気分が落ち込み、
何事にも意欲が湧かないというのが主な症状。


真面目で几帳面、すぐに自分を責めるような人がなりやすいと

思われてきました。

 

しかし2007年ごろから、20〜30代を中心に
「職場ではつらいと感じるけれど、帰宅後や休日は活発に活動する」
「自分を責めるのではなく、身近な人間や社会に対して攻撃的な態度をとる」
といった患者が増えています。

 

うつ病と診断されて休職中なのに、
海外旅行に出かけたり、趣味に打ち込んだり……。

 

そこで便宜上、新しいタイプのうつ病=「新型うつ病」と呼び、
きまじめな従来型のうつ病と区別するようになったのです。

 

専門的には「非定型・自己愛型うつ病」、
あるいは「職場うつ」「未熟型」「逃避型」「現代型」とも呼ばれています。

 

もっとも「新しいタイプのうつ病」とはいうものの、
本当に「うつ病」の範疇に入るのか、別の病気ではないのか、
そもそも病気と呼べるものなのか――。


専門家の間でも議論が分かれています。

 

現在、うつ病の診断に用いられている
アメリカ精神医学会の診断基準DSM-IVでは、
9項目の主な症状がいくつあてはまるかで病気を定義しています。

 

一定の症状があれば、新型と呼ばれるものも病名としては
「うつ病」と診断されるわけです。

 

したがって社員が「うつ病」と診断されたら、
いくら言動がわがままに思えても、労務管理上は
主治医の指示を尊重して対応しなければなりません。

 

 

睡眠習慣の見直し

睡眠時間にこだわらない

年をとると必要な睡眠時間は短くなります。
あまり長時間眠ることを目標とせず、
年齢に合った睡眠時間を設定しましょう。

 

眠くなってから床につく、就床時刻にこだわりすぎない

眠ろうと意気込むと、かえって頭が冴えてきます。
寝つけないままに床の中にいると、
眠れないことへの不安や焦りが生じ、
ますます眠れなくなってしまいます。

 

 

同じ時刻に毎日起床

何時間眠れたかにかかわらず、
毎日同じ時刻に起床しましょう。

 

 

眠る以外の目的で床の中で過ごさない

床の中でテレビを見たり、
読書をしたりしないようにしましょう。

なかなか眠れなかったら、いったん床から離れ、
自分なりのリラックスできることを行ってみましょう。

 

 

昼寝は短めに、遅くとも15時前に

長い昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠に悪影響を及ぼします。

 

 

 

睡眠衛生について

症状の把握とともに、睡眠衛生についてもチェックしましょう。
よくない睡眠環境や誤った睡眠習慣が、睡眠を妨げているかもしれません。

 

  • 寝室環境(騒音、日当たり、寝るときの明るさ、テレビやラジオ)
  • 睡眠習慣(床に入る時刻、床から出る時刻、実際に眠りに入る時刻、実際に起きる時刻、寝るときに習慣的にすること、昼寝)
  • 嗜好品(飲酒、喫煙、コーヒーなどのカフェイン類)

睡眠障害

健康のために睡眠はたいへん重要です。


睡眠は、心身の疲労回復をもたらすとともに、

記憶を定着させる、免疫機能を強化するといった
役割ももっています。

 

健やかな睡眠を保つことは、
活力ある日常生活につながります。


睡眠障害というと不眠症を考えがちですが、

不眠症以外にも様々な病気があり、
多くの人々が睡眠の問題を抱えていることがわかってきました。


夜の睡眠が障害されると、眠気やだるさ、

集中力低下など日中にも症状が出現します。


睡眠の問題と日中の問題は、

表と裏の関係にあるといってもいいでしょう。


このような、睡眠の問題や日中の眠気の問題が

1カ月以上続くときは、何らかの睡眠障害にかかっている
可能性が考えられます。


睡眠障害は、その原因によって治療法も異なります。

適切な治療を受けるためにも、
自分の睡眠状態や睡眠の問題を把握しておくことは重要です。

 

睡眠障害の何が問題なのか?

 

睡眠障害があると、何が問題になってくるのでしょうか?
ひとつには、睡眠障害によって、
日常生活や社会生活に支障が出てくることがあります。

睡眠障害によって日中の眠気やだるさ、
集中力低下などが引き起こされると、
日々の生活に支障をきたし、
極端な場合には事故につながることもあります。


また、睡眠不足や睡眠障害が長期間持続すると、

生活習慣病やうつ病などになりやすくなることがあります。


こうしたことから、

睡眠障害に適切に対処することが重要と考えられています。

 

 

 

自覚できる症状

 

  • 不眠(寝つきの悪さ、途中で起きてしまい再入眠できない、朝早く起きてしまう、熟睡できない)
    → 精神疾患や身体疾患、服用薬、下記の睡眠障害をチェック
    そのうえで不眠症かどうか判断
  • 過眠(日中眠くてしかたない、居眠りをして注意をされる)
    → 睡眠不足や睡眠の質が低下する病気がないか、チェック
    もし、夜十分眠っているのに日中眠い場合は、過眠症を調べる
  • 就寝時の異常感覚(脚がむずむずしたり火照ったり、脚をじっとさせていられないためによく眠れない、夕方以降に悪化)
    → むずむず脚症候群を調べる
  • 睡眠・覚醒リズムの問題(適切な時刻に入眠できず、希望する時刻に起床することができない)
    → 睡眠日誌で睡眠・覚醒リズムをチェック
    概日リズム睡眠障害を調べる

 

 

人から指摘される症状

  • いびき・無呼吸(いびき、眠っているときに息が止まる、突然息が詰まったようにいびきが途切れる)
    → 体重、飲酒、服用薬をチェック
    睡眠時無呼吸症候群を調べる
  • 睡眠中の異常行動(寝ぼけ行動、寝言、睡眠中の大声・叫び声)
    → 夢との関連性、起こして覚醒するかどうか、チェック
    睡眠時随伴症を調べる
  • 睡眠中の異常運動(寝入りばなや夜間に、脚がピクピクと動いている)
    → 就床時の異常感覚についてチェック
    周期性四肢運動障害を調べる

 

 

 

アルコール依存症

大量のお酒を長期にわたって飲み続けることで、
お酒がないといられなくなる状態が、アルコール依存症です。

 

その影響が精神面にも、身体面にも表れ、
仕事ができなくなるなど生活面にも支障が出てきます。


またアルコールが抜けると、

イライラや神経過敏、不眠、頭痛・吐き気、下痢、手の震え、
発汗、頻脈・動悸などの離脱症状が出てくるので、
それを抑えるために、また飲んでしまうといったことが起こります。


アルコール依存症は「否認の病」ともいわれるように、

本人は病気を認めたがらない傾向にあります。


いったんお酒をやめても、その後に一度でも飲むと、

また元の状態に戻ってしまうので、
強い意志で断酒をする必要があります。


ですから、本人が治療に対して積極的に取り組むこと、

家族をはじめ周囲の人のサポートがとても大切です。

 


長年の習慣的な飲みすぎがもたらす病気

お酒は「百薬の長」とも「万病のもと」ともいわれます。
適量の飲酒は健康にいいといわれますが、
多量のお酒は心身に好ましくない影響を及ぼします。


飲みすぎが習慣化している人の中には、
時間や場所を選ばずにどんなことをしてもお酒が飲みたくなり、
飲み始めたらやめられなくなるといった状態におちいる人もいます。


この段階は、もしかしたらアルコール依存症かもしれません。

飲みすぎが習慣化してからアルコール依存症になるまでの期間は、
男性で20年以上、女性はその半分の期間といわれています。

 

アルコール依存症は「進行性」の病気


アルコール依存症の患者数は現在日本国内で
80万人以上といわれていますが、その予備軍も含めると
約440万人にもなると推定されています。

 

危険な量はどのくらい?

どのくらいの量から「飲みすぎ」になるのでしょうか。
厚生労働省が推進する「健康日本21」の中では、
アルコール依存症の発症リスクが少ない
「節度ある適度な飲酒」は壮年男性の場合
純アルコール量換算で1日20g以下であるとの数値を示しています。


これは1日ビール500ml

(日本酒1合弱、25度焼酎なら100ml、ワイン2杯程度)に相当します。


1日の飲酒量がこの3倍以上になると

「飲みすぎ」となり、アルコール依存症になるリスクが
高まると警告されています。


単純計算すると1日にビール3本、

日本酒3合弱、25度焼酎300ml、
ワイン6杯程度を超える量にあたり、


お酒に弱い人でない限り、

ついおいしく飲んでしまう範囲といえます。


おいしいお酒を控えることは難しいことですが、

毎日これだけの量を飲み続けることはアルコール依存症に
一歩一歩近づいている可能性があるのです。


まずは日ごろから量をコントロールできる飲み方をする、

1週間に1−2日は飲まない日をつくる、
という習慣を身につけるようにしましょう。

 

早期に治療すれば回復が早い

アルコール依存症が進むと、体や精神に悪いばかりではなく、
飲酒運転で摘発されたり職場でのトラブルが重なって失業、
というように社会・経済的な影響がだんだん大きくなっていきます。

友人や家族との関係も影響をうけ、
自分の内・外の世界で多くの大切なものを
失うことになってしまいます。


アルコール依存症は、早期に治療を始めれば

それだけ治療効果があがりやすい病気です。


とくにプレアルコホリズムという、

依存症の手前できちんとした対策をとれば、
肉体的な問題だけでなく社会的にも経済的にも
より少ない損失で回復が期待できます。


プレアルコホリズムの段階では減酒でも

回復可能なことが多いのです。

 

心の不安を感じた時はどうしたら良いのでしょうか?

不安や緊張が強いとき、どうしたらいいのですか?

「気持ちが焦って落ち着かない」「ドキドキして不安」
といった症状は、「不安」や「緊張」といわれるもので、
普通の人なら、誰でも感じる感情であります。

 

日常においての心配や気になることがある、
初対面の人に会う、学校での試験の前、などに
このような症状を感じることは至って普通の
状態と言えます。

原因となる不安などがなくなれば、
症状も自然に消えてしまうものです。

 

問題は、そのような理由がないのに「気持ちが焦って落ち着かない」
「ドキドキして不安」などの症状が起こる場合です。

 

特に不安の原因がなく、それを感じる場合は
なんらかの病気であると考えられます。

 

病気による不安は普通の不安と全く違っており、
理由がないのに勝手に発生する、
あるいは多少の理由なのに異常に強い

不安原因がなくなっても消えないで続く、

などの特徴があります。

 

元々の正常な不安の存在は、今後起きる危険な状況に備えるために、
問題解決へ向かっての原動力になるという、元来人間にとって
必要な反応を自然に保持しているのに対して、


病気による不安は、何らかの心身的な精神疾患の前兆である
可能性があります。

 

上記のような原因がない不安を感じ、
それが「病的な不安」ではないか?と感じたら

一刻も早く精神科か心療内科を受診しましょう。

 

 

不安とはどういう症状?

その前にご自身で確認をするために
「不安」とはどういう状態をいうのか、

どんな病気が考えられるか?
予め、知っておくのはよいことです。

 

「不安」の定義

 

精神医学では「対象のない恐れの感情」となっています。

 

同様な言葉に「恐怖」というものがあります。
こちらは「対象が実在する場合」に用います。

 

不安は下記のような体の症状を伴います。

「心臓がドキドキして止まらない」(動悸)
「胸が締め付けられる」「呼吸が苦しい」「冷汗が出る」
「体が震える」「めまい・フラフラがする」「手足のしびれ」
「力が入らない」「尿の回数が多い」「のどが渇く」
「眠れない」「頭痛」「熱っぽい」など、

 

これらは自律神経、とくに交感神経の動作不良によるものです。

自分の心の感情と自律神経の働きは、
脳の中で密接に関連しているからです。

 

 

不安にはどのような種類があるのですか

急性、突発性の強い不安をパニックといいます。

パニック障害で著しくみられる不安症状で
例えば映画館の暗い場所に入った時などに
突然理由もなく強い不安に襲われることを言います。

 

動悸ー胸がドキドキして脈が速くなる、
胸が締め付けられて苦しい、呼吸ができない、めまいがする、などの
上記でお話した身体的な症状も同時に発生してしまい
死んでしまうのではないか?という状態になってしまうほどです。


ただし、これは、一時的なもので、時間が経つと
自然に消えてしまいます。

 

パニックの発作が度々繰り返される場合は、
「また襲われるのではないか?」という不安も新たに加わり

再度、パニックの発作が起きた時に、逃げられない、手だてがない、
誰にも助けてもらえない、といった場所や状況に行かなくなり
恐れる
という症状も更に加わります。

 

これは「恐怖症」という不安障害の一種にあたります。

・社交恐怖(人前で異常に緊張し、恥をかくことを恐れる)

・特定の恐怖症(高所、閉所、動物、暗闇など)」

もそれに当たります。

全般性不安

パニック発作に似ていますが、漠然とした強くない不安が
常に続く慢性的なタイプの不安症状のことを言います。


全般性不安は、全般性不安障害の病状にみられます。

強迫性障害、PTSDなども不安障害に分類される精神疾患で、
それぞれ特徴的な不安症状が現れます。

 

不安になる原因には
どのようなものがあるのですか?

不安障害は「不安」を主な症状とした精神疾患の位置づけであり、
パニック障害が代表的なものです。

 

一般身体疾患や物質などが原因で起きる疾患の例

一般身体疾患については

心不全、肺塞栓症、不整脈、慢性閉塞性肺疾患などの神経系疾患が
挙げられます。

 

原因となる物質については
カフェイン、覚せい剤など違法薬物、
アルコール、常飲していた鎮静剤、睡眠薬などを急にやめた時
生じる「離脱症状」などです。

これらは、見かけは「不安」という症状でも、
実際の原因は「身体疾患」や「物質」によるものです。

区別して診断治療にあたるには
きちんと検査するための受診が必要です。

これらのものは、症状によっては生命の危険性があります。

 

【受診する際の留意点】

薬物を摂取していた場合は医師に伝えることです。

そのほかにも、不安症状を伴う精神疾患はたくさんあります。

不安症状の発生しない精神疾患はほぼありません。

 

 

 

 

うつ病 心理面の症状

物事が思ったように進まないときには、
気持ちが落ち込んだり、腹が立ってイライラしたり、
不安で眠れないことがあります。

こうした心理面での症状があるからといって、
「こころの病気」とは限りません。

 

このような症状が長く続いたり、
生活するうえで支障が大きい、
つらくて苦しいといった場合は、
早めに対応することが大切です。

 

気持ちがしずむ、楽しいことがないのではどうしてですか

「気分が沈む」「気分が重い」「憂うつだ」などと
訴えられる症状を、精神医学では抑うつ気分と呼んでいます。

 

「何をするのにも元気がない」というのは
意欲低下と呼ばれます。


精神科医は、患者さんの状態からどのような症状があるかを診て、

現在どのような状態(これを状態像といいます)であると
考えるのがよいかを評価します。

 

「気分が沈んで、何をするのにも元気がない状態」は、うつ状態といわれます。

 

まず、うつ状態の原因となる病気にはどのようなものがあるかを検討します。


何かショックなことがあった時、

多くの人はうつ状態を経験しますが、
精神医学ではこれを最初に考えません。
大きな病気を見落とさないように、
うつ状態を起こす病気を一定の順番で考えていきます。

 

うつ状態はすべての精神科の病気で起こりうるものですから、
診断のためには、この症状以外にどのような症状があるかを
慎重に問診することが重要です。

 

 

自分の具合が悪い時にはどうしたらいいですか

うつ状態というと環境のストレスを考えがちですが、
体の病気や薬が原因だったり、
ストレスに対する対応を考えるよりも
抗うつ薬による治療を優先させたほうが
よかったりするようなうつ病もあります。

まず一度は専門家に相談することをお勧めします。

 

自分で「ふだんと違う」と感じる状態が1週間程度以上続いたら、
早めに精神科や心療内科などの専門医を受診したほうがいいでしょう。

 

身近にいる人が具合の悪いときはどうしたらいいですか

 

まず専門医にかかることをすすめてよいと思います。
専門医のアドバイスを受けるまでは、
できるだけ患者さんの負担にならないような、
あるいは気持ちが少しでも楽になるような接し方を工夫してください。

 

自宅の近くにどんな病院があるのか、精神科と心療内科、
どちらがよいのかなど、わからないようであれば、
かかりつけの内科医をまず受診して、
その医師から専門医を紹介してもらうのもひとつの方法です。

 

どうしても病院に行きたがらない方もいます。

その場合、食欲がない、だるいなどの体の症状について内科医受診をすすめ、
そこから専門医につなげる方法があります。

 

「あなたは病院に行かなくても大丈夫というけれど、
家族としては心配でしかたがない。
家族の心配を減らすためでもいいから、医師の判断を聞いてほしい」

のように、家族が本当に心配していることを
率直に患者さんに伝えることが受診につながることもあります。

 

うつ病の方を支える家族や周囲の方の気遣いが大変なことは
言うまでもありませんが、とくに適切な治療が始まるまでの心労は
非常に大きいものです。

患者さんをとりまく人が頻繁に話し合い、
力を合わせることもとても大切です。

双極性障害の治療法

心理療法

双極性障害は、単なるこころの悩みではありませんから、
カウンセリングだけで治るようなものではありません。

 

しかし、病気をしっかり理解し、
その病気に対するこころの反応に目を配りつつ、
治療がうまくいくように援助していく、
ある種の精神療法が必要です。

こういった精神療法を、医師の立場からは、
心理教育といいます。


(患者さんの立場から言えば、疾患学習という感じです。)

心理教育ではまず、病気の性質や薬の作用と副作用を理解し、
再発のしるしは何なのかを自分自身で把握することをめざします。

再発をほうっておくと自分でも病気の自覚がなくなり、
病院に来ることができなくなってしまいますが、

初期に治療を開始すれば、


ひどい再発にならなくてすむからです。

そのため、再発した時に、最初に出る症状(初期徴候)を確認し、
本人と家族で共有することが大事です。


再発のきっかけになりやすいストレスを事前に予測
し、

それに対する対処法などを学ぶことも有効です。
また、規則正しい生活をおくることも、
双極性障害の治療にはよい効果があります。


徹夜を避け、朝はしっかり日の光を浴び、

散歩などの軽い運動をする、といった形で、
できる限り一定のスケジュールで生活することは、
病気の安定化にとても大切です。


筆者が双極性障害を治したのはこの方法に

なります。

双極性障害の治療法

双極性障害には、気分安定薬と呼ばれる薬です。
日本で用いられている気分安定薬には、
リチウム、バルプロ酸、カルバマゼピンがあります。


その他、

日本では双極性障害に対する適応が認められていない薬の中に、
海外で双極性障害に対する有効性が確認されている薬がいくつかあります。


気分安定薬であるラモトリギン

(日本では難治性のてんかんに対して適応が認められています)、
非定型抗精神病薬であるクエチアピン、オランザピン、
アリピプラゾールなどです

(これらは、日本では統合失調症に対して適応が認められています)。

 

このうち、最も基本的な薬はリチウムです。

リチウムには、躁状態とうつ状態を改善する効果、
躁状態・うつ状態を予防する効果、自殺を予防する効果があります。


しかし、リチウムは副作用が強く、使い方が難しい薬でもあります。


リチウムを飲む時は、血中濃度を測りながら使わなければいけません。


リチウムを服用してすぐの濃度は不安定なので、

通常は、前の夜に服用した翌朝など、
血中濃度が落ち着いた時間に採血して、血中濃度を調べます。


有効な血中濃度は0.4mMから1.2mMくらいの間で、

これを超えると副作用が出やすくなります。


リチウムの副作用として、とくに飲み始めに下痢、食欲不振、

のどが渇いて多尿になる、といった症状が出ることがあります。


また手の震えは、有効濃度で服用していても長期に続く場合があり、

なかなかやっかいな副作用です。


さらに、血中濃度が高くなり過ぎると、

ふらふらして歩けなくなり、意識がもうろうとするなど、
様々な中毒症状が出る場合があります。


甲状腺の機能が低下する場合もありますが、

これは甲状腺ホルモン剤を合わせて飲むことで対処できます。


体調が変化した時

(食事や飲水ができないことが続いた時、腎臓の病気にかかった時など)には、
急激に血中濃度が高くなって中毒症状が出る場合があるので、
血中濃度をチェックする必要があります。


また、様々なほかの薬(高血圧の薬など)との組み合わせによって、

リチウムの血中濃度が急に高まったり、
中毒が起きやすくなったりする場合があります。


別の病院でもらった薬でも、

同じ院外薬局で出してもらうようにすることで、
飲み合わせの悪い薬がないかどうか、
薬剤師に確認してもらえるでしょう。


リチウムなどの気分安定薬に加えて、

うつ状態の時には、抗うつ薬が処方される場合もあります。


しかし、抗うつ薬の種類によっては、

かえって症状が悪くなってしまうこともあるので、注意が必要です。


とくに三環系抗うつ薬と呼ばれる古いタイプの抗うつ薬は、

躁状態を引き起こすことがあるので、
双極性障害の方はできる限り避けたほうがよいでしょう。


また、まだはっきりしたことはわからないのですが、
双極性障害の方が抗うつ薬を飲むと、
アクティベーションシンドロームと呼ばれる、
かえって焦燥感などが強まって悪化してしまう状態が
起きやすいのではないか、と疑われています。


うつ状態で病院に行った時に、

過去の躁状態について話をしそこなった場合という場合は、
医師がこうした可能性について注意を払うことができません。


うつ病として治療を受けているけれど、

過去に躁状態や軽躁状態があったかもしれないと思う人は、
必ず医師に伝えてください。


とくに「うつ病と診断されて抗うつ薬を飲んだけれど、症状が悪化した」

という人は、双極性障害である可能性も考えて、医師に報告し、
よく相談してください。


精神科の治療は、副作用との戦いです。

精神疾患には有効な治療が多くあるのですが、
どれも副作用があるものばかりです。


とくに双極性障害の治療薬であるリチウムの副作用は、

けっして軽いものではありません。


しかし副作用のない薬はなく、

双極性障害の治療薬は限られています。


「副作用が出たから、この薬は合わない」とやめてしまうと、

せっかく回復できる可能性があるのに、
これをみすみす失っていることになってしまいます。


薬には副作用があることを前提として、

自分の病気のコントロールのために、
どのように副作用と折り合いをつけながら治療していこうか、
という姿勢で臨むことが大切です。

 

次回は副作用のない心理療法の話をします。

双極性障害の症状

躁状態

双極Ⅰ型障害の躁状態では、
ほとんど寝ることなく動き回り続け、
多弁になって家族や周囲の人に休む間もなくしゃべり続け、
家族を疲労困ぱいさせてしまいます。


仕事や勉強にはエネルギッシュに取り組むのですが、

ひとつのことに集中できず、何ひとつ仕上げることができません。


高額な買い物をして何千万円という借金をつくってしまったり

法的な問題を引き起こしたりする場合もあります。


失敗の可能性が高いむちゃなことに次々と手を出してしまうため、

これまで築いてきた社会的信用を一気に失ったあげく
仕事をやめざるをえなくなることもしばしばあります。


また、自分には超能力があるといった誇大妄想をもつケースもあります。

 

 

軽躁状態

双極II型障害の軽躁状態は、
躁状態のように周囲に迷惑をかけることはありません


いつもとは人が変わったように元気で、

短時間の睡眠でも平気で動き回り、
明らかに「ハイだな」というふうに見えます。


いつもに比べて人間関係に積極的になりますが、

少し行き過ぎという感じを受ける場合もあります。


躁状態と軽躁状態に共通していえることは、多くの場合、

本人は自分の変化を自覚できないということです。

 

 

 

 

大きなトラブルを起こしていながら、
患者さん自身はほとんど困っておらず、
気分爽快でいつもより調子がよいと感じており、
周囲の困惑に気づくことができません。

 

 

うつ状態

双極性障害の人が具合が悪いと感じるのは、うつ状態の時です。
筆舌に尽くしがたい、何とも形容しがたい
うっとうしい気分が一日中、何日も続くという
「抑うつ気分」と、


すべてのことにまったく興味をもてなくなり、

何をしても楽しいとかうれしいという気分がもてなくなる
「興味・喜びの喪失」の二つが、うつ状態の中核症状です。


これら二つのうち少なくともひとつ症状があり、

これらを含めて、早朝覚醒、食欲の減退または亢進、
体重の増減、疲れやすい、やる気が出ない、自責感、自殺念慮

といった様々なうつ状態の症状のうち、
5つ以上が2週間以上毎日出ている状態が、うつ状態です。
双極性障害では、最初の病相(うつ状態あるいは躁状態)から、
次の病相まで、5年くらいの間隔があります。


躁やうつが治まっている期間は何の症状もなく、

まったく健常な状態になります。


しかし、この期間に治療をしないでいると、

ほとんどの場合、繰り返し躁状態やうつ状態が起こります。


治療がきちんとなされていないと、

躁状態やうつ状態という病相の間隔はだんだん短くなっていき、
しまいには急速交代型(年間に4回以上の病相があること)へと
移行していきます。


薬も効きにくくなっていきます。


双極性障害で繰り返される躁状態の期間とうつ状態の期間を比較すると、

うつ状態の期間のほうが長いことが多く、
また先述の通り、本人は躁状態や軽躁状態の自覚がない場合が多いので、
多くの患者さんはうつ状態になった時に、うつ病だと思って受診します。


そして病院にかかった時に、以前の躁状態や軽躁状態のことが

うまく医師に伝わらない場合、治療がうまく進まないことがあります。


このように、双極性障害が見逃されている場合も少なくないと思われます。