長期に患う重度うつ病と自殺の関係
一口にうつ病と言っても実際には、極軽いものから
10年以上も患う重度のものまで、その度合いはマチマチです。
中には自殺に走る患者も多く、自殺者のほとんどが
うつ病患者であるいう報告もあります。
うつ病になるとなぜ死にたくなるのか、また、
うつ病で自殺する人の割合などについて説明します。
「自殺念慮」とは?
「死にたい」「消えてしまいたい」と自分から死を望むことを
医学界の言葉で「自殺念慮(じさつねんりょ)」と言います。
こちらでは、うつ病と自殺念慮(自殺)の密接な関係について
お話したいと思います。
うつ病患者の自殺率
うつ病患者の自殺の割合はその患者数の20%前後と言われており
相当な高い確率で死に走るケースがよく見られます。
WHO・世界保健機構の調査によると、
世界中の自殺者のうち、
うつ病を患っていた人は更に30%に上ってしまいます。
日本でも自殺者のうち約60%がうつ病であったと伝えられており、
その約60%のうち80%前後は精神科などを受診していなかったと
されています。
アメリカ合衆国の精神医学者が作成した、
うつ病の診断マニュアルの中には
「死にたいという思いにかられる」といった項目を
診断の材料の一つに挙げていることから考えると、
「死にたい」という状態は、一つのうつ病の症状であると
考えることができます。
なぜうつ病患者の自殺率が高いのか?
うつ病の時は全くなにもしたくなくなる
私が経験したことでお話すると、うつ病だった時は、
何もやる気が起きない虚無感が常に心にあって、
しかもその時の体や思考の状態が言葉にならないほど辛かったので
「こんなに何も楽しくないのなら生きていても仕方がない」と
常に勝手に心に浮かんでいたという事実は確かにありました。
でもそれは、
なにも希望がわかないから→「死にたい」と考えるのではなくて
あくまで勝手に頭に湧き上がる妄想であったと記憶しています。
実際にうつ病患者さんにはそういう妄想に囚われる場合が多いと思います。
病理学的な脳の仕組み
その状態を引き起こす原因は、
病理学的に言うと、うつ病とその脳内の仕組みである
「脳内伝達物質が正常に働いていない」から、
と考えられているそうです。
脳内伝達物質の不足とは?
脳内伝達物質には、セロトニン、ノルアドレナリン、などがあります。
極度のストレスにより、またその蓄積により
情報伝達物質の量が極端に減少して、
脳自体の機能がかなり低下した状態になっています。
正直な感想を言うと、「思考停止」状態です。
同時に、セロトニン(幸せホルモン)の量が減っているので、
ストレスがイライラに変化し、自己暴力性が上昇します。
この自己暴力性は、内側(自分)に向かって働きかけられるので、
自殺願望を引き起こすと言われています。
また、アメリカでも、SSRIと言う抗うつ剤が治療に用いられた際に
その量の加減で、実際に自殺を引き起こしたケースもあります。
抗うつ薬はそもそも、十分に分泌されなくなったセロトニン等の
脳内伝達物質を増やしたりなどの調整をする機能があるはずですが
この働きが何らかの拍子で急に過剰反応を起こすと、自殺願望に
作用してしまうことがあるためです。
これを、賦活症候群(アクチベーション・シンドローム)と呼び、
この作用を踏まえて、SSRIの一種である「パロキセチン」の投薬を
18歳未満の患者には、控えるよう呼びかけることになりました。
(厚生労働省)