脳血管性うつ病

この「脳血管性うつ病」は、臨床経過から
大きく分けると次の2つがあります。

1.脳血栓、脳梗塞後にうつ症状が出る

2.最初、うつ症状が出て、実は
  脳梗塞を発症していた

1の場合は比較的大きな梗塞、
2の場合は微小梗塞である
場合が多いものです。

どちらの場合も、簡潔に言えば、
主に脳の前頭葉に生じた脳梗塞が
脳神経細胞を破壊することにより
結果的にうつ病を発症するものです。

1の場合は、治療後もフォローで頭部MRI
を撮影する機会があるため、うつ症状が
現れても、脳梗塞が原因の「脳血管性うつ病」
と簡単に判別できます。

注意しなければならないのは2の場合です。

症状から、精神科で普通の「うつ病」と診断
されてしまって、抗うつ剤の投与で治療しているうちに、
脳梗塞が拡大していってしまいます。

うつ症状が現れた時はまだ小さな梗塞である
ことが多いのです。

この時に脳梗塞を発見できて、うつ病の治療
ではなく、脳梗塞の治療ができればよいのです。

しかし、そうでないといつしか脳の主要血管をふさぎ、
脳梗塞は致命的なまでに拡大し、
最悪の場合は死に至ることになります。

脳血管性うつ病の場合、普通のうつ病と違い、
うつ症状に加え、麻痺、言葉が出にくい、頭痛
などの症状が出ることがあります。

しかし、脳梗塞が小さいうちですと、これらの
症状の出方も小さく、いとも簡単に見逃されて
しまうのです。

「うつ病」と診断した患者さんにも身体検査が
必要なのはこのためです。

また、念のため、高血圧の病歴、喫煙、
アルコールの有無、うつ症状の現れ方も
詳細に問診します。

その後必要に応じて頭部CT,脳波を取ります。

脳梗塞疑いであれば、梗塞の様子をより詳しく
知るべく頭部MRI検査を行います。

実際、このような問診、検査手順を踏むことで、
見かけは「うつ病」でも、誤診せずに
「脳血管性うつ病」と診断した例も
1ヶ月に1度はありました。

「脳血管性うつ病」と診断した後は、脳神経内科
に依頼し、脳梗塞の治療を行いながら、
必要に応じて精神科も関わるという体制を
取ります。