「統合失調症」というと、
「幻聴が聞こえて、あらぬ妄想を抱いたり」
という「妄想型」をまず連想する人が
多いと思います。
統合失調症にはこのほかにも、
「緊張型」「破瓜型」「単純型」
「残遺型」「鑑別不能型」などがあります。
実は、「統合失調の破瓜型」が「うつ病」
と誤診されて、7年間もうつ病の治療を
受けてしまった例があります。
他院より「難治性うつ病」として、私の勤める
病院に紹介されてきたのですが、
患者さんはその時30歳になっていました。
何しろ診察時、まともな会話が成立せず、
抗うつ剤3種類と睡眠薬2種類を7年間
服用してきたというのです。
付き添いの母親に、初めて精神科に行く前の
状況を聞きました。
それまで元気に行っていたアルバイトに
ある日急に行かなくなったというのです。
そのうち、どこにも出かけず、一日の
大半をテレビを見るか臥床して過ごす
ようになりました。
見かねて連れて行った病院で「うつ病」
と診断され、抗うつ剤を出されて長年
飲んできたものの、一向に状態は改善せず、
7年間同じままだったということです。
母親への病歴の問診、詳細な診察から、
「難治性うつ病」ではなく、
「統合失調症 破瓜型」と診断名を
変更しました。
診断を間違えられて、7年間も効果のない
治療を受けてきたことに、母親は
大変なショックを受けてしまいました。
それ以後、抗精神病薬を併用しながら、
抗うつ剤を漸減中止していくのに、
非常に手間がかかりました。
6ヵ月後には、何とか、簡単な会話が
成立するようになったものです。
この患者さんには、作業所に通っていただき、
自分の好きなペンキ塗りの作業には、
意欲的に取り組めるようになりました。