従来型の典型的なうつ病とは印象が違う、新しいタイプのうつ病のこと。
仕事中だけうつで、職場を離れると活動的になるなど
自己中心的に映るため、
周囲が対応に苦慮する場合も少なくありません。
職場ではうつでもプライベートでは活動的
わがまま”に思えても対応は慎重に
うつ病が社会に蔓延しています。
厚生労働省の調べによると、うつ病、躁うつ病などの患者は
ここ10年ほどの間に2倍以上に急増。
診療施設は増えているものの追いつかず、
パンク寸前のクリニックも少なくありません。
背景には、病気に対する啓発が進み
精神科への抵抗が薄れたことや、
企業のメンタルヘルス対策が普及したことなどがありますが、
新型うつ病の患者が増えていることも一因だといわれています。
うつ病というと、
周囲の状況に関係なく慢性的に気分が落ち込み、
何事にも意欲が湧かないというのが主な症状。
真面目で几帳面、すぐに自分を責めるような人がなりやすいと
思われてきました。
しかし2007年ごろから、20〜30代を中心に
「職場ではつらいと感じるけれど、帰宅後や休日は活発に活動する」
「自分を責めるのではなく、身近な人間や社会に対して攻撃的な態度をとる」
といった患者が増えています。
うつ病と診断されて休職中なのに、
海外旅行に出かけたり、趣味に打ち込んだり……。
そこで便宜上、新しいタイプのうつ病=「新型うつ病」と呼び、
きまじめな従来型のうつ病と区別するようになったのです。
専門的には「非定型・自己愛型うつ病」、
あるいは「職場うつ」「未熟型」「逃避型」「現代型」とも呼ばれています。
もっとも「新しいタイプのうつ病」とはいうものの、
本当に「うつ病」の範疇に入るのか、別の病気ではないのか、
そもそも病気と呼べるものなのか――。
専門家の間でも議論が分かれています。
現在、うつ病の診断に用いられている
アメリカ精神医学会の診断基準DSM-IVでは、
9項目の主な症状がいくつあてはまるかで病気を定義しています。
一定の症状があれば、新型と呼ばれるものも病名としては
「うつ病」と診断されるわけです。
したがって社員が「うつ病」と診断されたら、
いくら言動がわがままに思えても、労務管理上は
主治医の指示を尊重して対応しなければなりません。