うつ病の身体症状

うつ病の症状は、抑うつ気分や無気力状態などの精神症状より、
だるさや痛みなどの「体の不調=身体症状」から始まるので、
気付くことができれば早期治療に役立ちます。

どんな症状があるのか、詳しく紹介していきます。

うつ病は気分の変調を基本症状とする病気ですが、
その初期症状は身体症状から始まります。
身体症状の種類について紹介します。

うつ病は「体の痛み」からあらわれる

うつ病は「気のせいかな」という程度の身体症状からはじまり、
徐々に悪化していきます。

不眠

「次の日に大事な会議などが控えていると気になって眠れない」
また「うっかり寝坊して遅刻」といった経験は誰にでもあるでしょう。

しかし、それがたびたび起こるようなら、
うつ病の代表的な症状である「睡眠障害」を疑ったほうがいいかもしれません。

食欲不振

食欲がなくなるのは、うつの代表的な症状です。
1か月に5、6キロというペースで痩せていくので
周囲はその変化に戸惑うのですが、本人に自覚はありません。

頭痛、肩こり

痛みの出る箇所は頭全体、おでこ、こめかみ、頭頂部など
さまざまな場所に及びます。

この場合、鎮痛剤を飲むと一時期的に病状は軽減されますが、
疲労が蓄積し続ければ、抗うつ薬でなければ症状の改善が難しくなります。

だるさ、めまい、発汗

ストレスによる脳の機能低下は、自律神経の乱れを生み、
めまい、発汗などの症状を招きます。

自律神経失調症や更年期障害と同じ症状であり、
これらが原因でうつ病を引き起こすこともあります。

性欲減退、生理不順

うつ病による自律神経の乱れは、ホルモン分泌にも影響を与えます。

性ホルモンの変調はうつ病特有の無気力状態なども加わり、
性行為が苦痛になり、やがて不可能になります。

「シンドローム・シフト」を早期発見の手がかりに

うつ病による痛みは頭以外の場所にも起こります。

耳や目、時には口が痛くなる場合もあり、痛みがあちこちに移動します。

ところが、内科で診断を受けても原因がわからないのが、この症状の特徴です。

これを「シンドローム・シフト」といいます。

ストレスを蓄積した脳が「痛み」の信号を体に伝えている状態で、
うつ病の早期発見の手がかりとなります。

うつ病を長引かせないためには早期治療が大切です。
シンドローム・シフトが疑われるときは、「気のせい」と
思わないことです。

うつ病の精神症状

うつ病の基礎知識

うつ病は気分の障害を基本症状とする精神障害ですが、
症状には体の不調を訴える「身体症状」と感情面に現れる
「精神症状」の2つがあります。

ここではうつ病の「精神症状」にはどのようなものがあるのかを紹介します。

うつ病は「気分の障害」とされます。

気分は時々の状況で上向きになったり、沈んだり変化します。

しかし、うつ病になるとこうした喜怒哀楽の変化は起こらなくなります。

「精神運動の停止」はうつ病のサイン

人の気分は、意識的に起こすものでなく、自動的に起こり、変化します。

うれしいことがあればよい気分になり、嫌なことがあれば悪い気分になります。

このような「気分」は自律神経が調整しています。

うつ病になるとこうした気分の変化が起こらなくなります。

うつうつとした気分に支配され、よい出来事があっても楽しくならず、
うつうつとした気分が続きます。

このように心が思うように動かずブレーキをかけられているような状態を
「精神運動の制止」と言い、うつ病の主症状のひとつでもあります。

この精神運動の制止は当然、日常生活にも大きな影響をきたします。

代表的なものとしては、思考の停止や意欲の停止があります。
以下で、うつ病の代表的な精神症状を紹介します。

うつ病の代表的な精神症状7つ

うつ病と考えられる7つの代表的な精神症状を紹介します。

やる気が起きない

意欲が低下し、何をするのも億劫になります。
人と話すのが面倒になり、引きこもりがちになります。
さらには、入浴や歯磨きといった日常生活において当たり前のことも面倒になります。

憂うつになる

理由もなく悲しくなったり寂しくなったりといった、うつうつとした状態が続きます。

イライラ

思考や意欲が低下する一方で、心の中では「~しなければ」
といった焦りが起こっています。
心理的な急き立てにより、イライラといった症状も現れやすくなります。

判断力の低下

うつ病になると脳が機能低下を起こすため、判断力がなくなります。

仕事に優先順位がつけられなくなり、
簡単な仕事から手をつけるようになります。

その結果、重要な仕事ほど後回しになり、やがては業務に支障が出てしまいます。

思考力の低下

うつ病になると、思考力が低下します。
まず、新聞の経済面といった硬いものが読めなくなったり、
読んでも頭に入らず、同じところを何度も読む、といったこともあります。

無感動

感情の中枢が機能低下を起こすため、
趣味や関心ごとが楽しいと感じられなくなります。

放置すれば、最終的にはまったく感情の動きがなくなってしまいます。

集中力がなくなる

うつ病により記憶力や集中力が低下すると、
料理など集中力を必要とする作業が難しくなり、
メニューにバラエティがなくなって、
最終的には料理が作れなくなってしまいます。

身振りや話し方がゆっくりになる

うつ病では脳の機能低下により、思考速度が鈍くなり、
時には停止してしまう場合もあります。

その結果として、身振り手振り、話し方がしだいに緩慢になっていきます。

よくつまずく。階段を踏み外す

うつ病では五感の働きを中心とする感覚認知機能が低下するため、バランス感覚が鈍くなり、左右によろける、つまずくなどの症状が出てしまいます。

記憶力の低下

脳の記録力が低下しているために起こる症状です。

毎日毎日トイレットペーパーを買ってくる、
しまった場所を忘れてしまうなど。

認知症の初期にも見られる症状です。

自分は無価値だと思う

うつ病の一般的によく知られた心理状態です。

うつ病は複雑な思考ができなくなるため、
ものごとを単純に考えようとします。

白か黒かでしか考えられなくなるので、「自分は無価値だ」とか
「死んだほうがよい」となってしまうのです。

うつ病になりやすい人は自己評価の低い人?

■抑うつ症(うつ病)
生きてくうえでさまざまな問題にぶつかれば、
私たちは誰もがうつ病になる可能性を持っている。

だが、どのくらいの確率でそうなるかは、
その人の持つ自己評価によって変わってくる。

では、どんな人が危険なのだろう?

ごく普通に考えれば、それは自己評価の低い人である。

だが、自己評価が高くても、それが不安定であれば、
うつ病になる危険性は高い。

自己評価が高く不安定 な人は、
自分の地位やイメージを保つために絶えず努力している。

だが、そのいっぽうで失敗や人からの批判には弱い。

そこで、自分のしていることがうまくい かなかったりすると、
深く落ちこんでしまう場合があるからだ。

しかし、そうはいっても
うつ病の可能性と言うことであれば、
やはり自己評価が低く安定している人がいちばんだろう。

自己評価が低く安定している人は自分を 否定する気持ちが強く、
その状況を改善する努力をしない。

その結果、少しでも何かがあれば抑うつ状態になり、
そこから抜け出すことが難しいからだ。

■自己評価が低いのはうつ病か?
では、自己評価が低いこととうつ病であることはどう違うのか?

反対に、この二つはどういうふうに関係しているのか?
しばらくはそのことについて考えてみよう。

まずはこの二つの違いについてまとめよう。
 ◆―自己評価が低いこと(特に低く安定している)
<自己評価の状態> ほとんど変化しない。
<病気かどうか> 性格の特徴にすぎない。
<精神状態> もろくて不安定。
<行動との関係> 自分の行動に自信が持てない、
しなければならないことを先延ばしにする、
自分の行動に満足できない、などの問題がある。
<身体的な症状> 特にない。
<心理的な特徴> 自分に価値があると思えない。すぐにあきらめる傾向にある。
<自殺の恐れ> 死や自殺について考えることはない。
<知能に対する影響> 本人は「知的能力が劣ってきている」と言うことがあるが、
客観的にはそういった現象は見られない。集中力も記憶力も正常に働く。

 ◆―抑うつ症(うつ病)
<自己評価の状態> 変化することがある。
<病気かどうか> 病気。
<精神状態> 深く病的な悲しみが続く。良い出来事には反応を示さない。
<行動との関係> 気分がうちひしがれて、何をしても楽しくない、
何もしたくない、などの障害がある。
<身体的な症状> 食欲不振。不眠。動作が緩慢になる。無力症。
<心理的な特徴> 自分を卑下したり、過剰で不適切な罪悪感を持つ。
<自殺の恐れ> 死や自殺について考えることがある。
<知能に対する影響> 客観的に測定できる。集中力と記憶力に障害が見られる。

このうちいちばん大きな違いは
病気かどうかということだろう。

うつ病は文字通り精神の病である。

だが、自己評価が低いというのは性格の特徴にすぎない。
これは大切なポイントである。

いっぽう、この二つの関係に目を向けると、
まず何よりも自己評価の低さはあらゆる種類の
うつ病に共通して表れる症状であるということが言える。

すなわち、うつ病になると、自己評価は著しく低下するのである。

◆―発症する危険
青年期(十二歳から十九歳くらい)に自己評価の低かった人間は、
大人になってからうつ病を発症することが多い。

また、<産後抑うつ>として知られる出産後 のうつ病は、
まわりの人間からサポートを得ると同時に、
自己評価を良好に保つことによって、
発症しにくくなるという。

これについてはまた別の研究も行われ ていて、
七百三十八人の女性を対象に調査を行ったところ、
<産後抑うつ>にかかった女性は圧倒的に自己評価の低い人が多かったという。

ところで、うつ病になる危険は、残念ながら
親から子に伝えられることがある。

たとえば、ある研究によると、母親がうつ病の子どもは、
そうでない子どもに比 べて自己評価が低いことがわかった。

これはうつ病の母親が子どもに対して
否定的なメッセージを送ることが多いからであるが
(子どもの将来を悲観したり、お まえは駄目な子だとすぐに口にする)、

こうして青年期までに低い自己評価ができあがれば、
本人がうつ病になる危険性も高くなるというわけである。

これとは反対に高く安定した自己評価ができていれば、
たとえ両親が離婚するなど辛い出来事があっても、
それに耐えることができる。

両親の離婚はうつ病を引 き起こしかねないほど
重大な出来事である。だが、自己評価が高ければ、
その危険を比較的容易に避けることができるのである。

◆―病気の程度と慢性化
うつ病を発症した場合、自己評価が低ければ低いほど、
そのうつ病の程度は重症になる。

また、それと同時に回復の契機もつかみにくくなるので、
病気は慢性す る恐れがある。

というのも、自己評価が低ければ、
患者は何も行動を起こさず、
自分を好きになることができないまま、
ただ否定的な感情を心のなかで反芻す る。

自分が回復して社会復帰できるようになるとも思わない。

ということになれば、いつまでたっても心配事を抱えるばかりで、
気持ちが明るく勇気づけられる ようなことは何も起こらなくなるからである。

この反対に、まだ軽いうつ病の場合は、
患者のなかにも社会と接触を持って
人から認められたいという気持ちが残っている

―すなわち、わずかながらでも自己評 価は高い。

そうなると、先ほどとは反対の理由で回復の道筋が見えてくる。

人から認められれば気持ちも明るくなり、自信も出てくる。

そうなれば、また何かを する気になって、という具合に
状況がいい方向に回転して、

最後にはうつ状態から脱することができるのだ。

自分に対して肯定的な気持ちを持つ(自己評価を高 くする)といのは、
回復には欠かせない大切な要素なのである。

■引き金になる出来事
うつ病の引き金になる出来事は性格のタイプによって違うという説がある。

うつ病との関連で人間は二つのタイプに分けられる、
「向社会型人間」と「自主独立型人間」である。

そして、このどちらに属するかによって、
どんな出来事がうつ病の引き金になるかが変わってくるという。

 ◆―「向社会型人間」の場合
<定義> 他の人からつねに注目されたり、励まされたりする必要がある人間。
<うつ病の引き金となるような出来事> 誰かに批判される、あるいは人から
受け入れられなかったり、仲間はずれにされたと感じる出来事。
<自己評価への影響> 自分は人から愛されないと思う。

 ◆―「自主独立型人間」の場合
<定義> 目標に到達することが大切で、他の人から支配されたり、
束縛されたりするのを嫌う人間。
<うつ病の引き金となるような出来事> 何かに失敗すること、あるいは、
人に頼らなければならなくなるような出来事。
<自己評価への影響> 自分には能力がないと思う。

「人から受け入れられなかった」というのは、
「愛されなかった」ということである。

また、「失敗した」というのは「自分の能力が否定された」ということで ある。

これは前に述べた自己評価の栄養源の話と関係している。

自己評価の栄養源は、「愛されているという気持ち」と
「能力があるという気持ち」を合計した ものである。

ところが、この二つのタイプの人間は、
そのどちらかが見たされなかった場合に
うつ病になりやすくなるのだ。

うつ病の引き金になった出来事を調 べていくと、
そのおおもとはやはり自己評価が傷ついたことにあったのである。

なぜうつ病はエネルギーが出ないの?

うつ病になると「力が全然わいてこない」と患者さんはよく訴えます。

また、天気でいうと「どんよりとした曇り」とも表現されます。

そうした心の内をあらわす表現は、実は的を射ているのです。

健康なとき、私たちは意欲や感情を、
行動や表情などで外にあらわします。

こうした「気持ち」→「エネルギー」に変換することが、
うつ病では難しいのです。

ここでは、心から脳内のエネルギー変換のヒミツに迫ります。

さまざまな症状から始まるうつ病

うつ病の症状は、風邪や腹痛などの病気と違って
とても広範囲にわたります。

患者さんの訴えが「気分が落ち込み、ひどく憂うつになる」
というものだけなら、診断もとてもわかりやすいのですが、

「早朝に目が覚めるのに夜寝られない」とか、
「食欲や性欲がない」、なかには、
頭痛、歯痛や胃痛など「痛み」を
最初に訴える患者さんも少なくありません。

さまざまな症状の原因を探っているうち、
専門医への受診が遅くなり、
結果としてうつ病と診断されるまでに
時間がかかってしまうことも多くあります。

原因不明のこうした症状が出たときは、
最近の生活状態や、身近な人の死亡や離婚、転居などの
人生における大きなイベント、ショックな出来事、
過剰なストレスがないかなども含めて考えましょう。

うつ病をダムに例えると…

うつ病はよくダムの話に例えられます。

順調に生活を送っているときはダムには心理的エネルギー、
すなわち水が満々とたたえられていて、
ダムにある発電所も活発に動き、

感情や活動のエネルギーもたくさん得られて、
行動力にあふれ、表情も豊かな生活をしています。

しかしいったん過剰なストレスを受けたり、
過労などさまざまな要因で心理的エネルギーが減っていき、

いわばダムの水が少なくなっている状態になると、
発電所のタービンも回らず、
エネルギーを取り出すことができません。

表情もほとんどなく、
ずっと家に籠ったきりということもあります。

うつ病とは、まさにこのような状態なのです。

うつ病の治療は少しずつ根気よく

うつ病のとき、脳では心理的エネルギーを取り出すはたらきが悪くなっています。

ダムの水はだんだんと少なくなっていき、
ついには発電が止まってしまいます。そのため、
脳は「これは大変だ!」とさまざまなサインを、
症状という形で私たちに送ってきます。

そのサインである症状を見逃さないようにすることが大切です。

そして、脳が発信してくれた症状の改善をはかりながら、
ダムの水を増やしていくためには、
休養と薬物療法などによる治療が必要になってきます。

しかし、いったん減ってしまったダムの水を増やしていくのは
なかなか容易ではありません。

この治療には根気と調節が必要なのです。

うつ病の原因?! 神経伝達物質のヒミツ

神経伝達物質とは?

一般には、「気の持ちよう」といわれたうつ病は、
医学的に研究が進み、その原因が探られています。

ヒントは、脳に一千数百億個も存在するとされる
神経細胞にありました。

どのように研究者たちは、心の問題の解決法を
脳の中に求めたのでしょうか?

うつ病と神経伝達物質について考えてみましょう。

私たちの心と頭の中では…?

私たちは日常、さまざまな出来事に出会って
喜怒哀楽の感情を表現したり、
いろいろなことを考えたり、
食欲などの意思を行動に移したりして生活しています。

こうした感情や意欲のようなものは、
単に「心」があるから生まれるということではなく、
脳の機能として役割分担があり、

きちんとコントロールされていることが、
脳科学の進歩によってわかってきました。

脳では神経細胞同士の情報伝達によって、
心の機能(意思や感情)を体の機能(行動や運動)を行う
細胞に伝えていくはたらきを持っています。

脳の神経細胞同士も、さまざまな情報を基本的に
電気信号でやりとりしています。

神経細胞はさまざまな情報を電気信号で伝達しています

神経細胞が網のように広がるわけは?

一見、神経細胞は脳内に網のように
張り巡らされているように見えますが、
実は1本1本独立していて、
隣の神経細胞との間には空間があります。

なぜこのような構造なのかというと、
急激に外部から力が加わったとき
(例えば、頭をどこかにぶつけてしまったとき)に、
神経細胞が切れてしまうのを防ぐ、いわば自然の工夫のようなものです。

神経細胞を詳細に見ると、
樹の枝のように伸びた突起があり、
そこに無数の隆起があって、

神経細胞同士をつなぐシナプスというつなぎ目があることがわかります。

気持ちや意欲はどのように伝わるの?

シナプスの間の隙間では、
電気信号で送られてきた情報の量に応じて
神経伝達物質がこの隙間に送り出され、
次の神経の受け取る側に渡されることで、情報が伝わっていきます。

このとき電気信号が神経伝達物質に変わることで、
情報の信号を強めたり、さらに情報が細かく分かれて
伝わるはたらきが生じるのです。

うつ病のときには、この神経伝達物質に
異変が起きていると考えられています。

シナプスの間の隙間では、情報は神経伝達物質で伝わります

神経伝達物質にはどんな種類があるの?

現在、神経伝達物質は100種類以上も存在するといわれていて、
そのうち約60種類が発見されています。

なかでも、うつ病の治療ではセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンという
3種類が重要視されています。

これらの神経伝達物質がバランスよくはたらくことにより、
脳の機能は健全に保たれるのですが、
うつ病では過剰なストレスや過労などが引き金となって、

これらの物質が減少し、喜怒哀楽のコントロールが
できなくなってしまうと考えられています。

神経伝達物質にはどんなタイプがあるの?

神経伝達物質には、情報を受け取る側の受容体に
はたらきかけて神経細胞を興奮させるタイプと、
抑制させるタイプがあります。

うつ病の治療で重視される神経伝達物質のうち、
セロトニンは抑制型の神経伝達物質で、
ノルアドレナリン、ドパミンは興奮型の神経伝達物質です。

私たちは日常の中で、さまざまな出来事に出会って、
これらの神経伝達物質を作り出しているわけですが、
ときには偏りが生じ、

例えば興奮型の神経伝達物質が過剰に作り出されると、
神経が興奮しすぎて暴走することもあります。

健康な状態では、
神経伝達物質のバランスがとれており、
脳や体の機能も健全に保たれるのです。

どうしてうつ病になるの?

私たちの心の状態、脳内の神経の状態は毎日、
毎時変化しています。

うつ病になる仕組みはまだ完全には解明されていませんが、
神経伝達物質の中のモノアミン類
(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなど)が
関わっていると考えられています。

過剰なストレスや過労などが引き金となって、
神経伝達物質のうち、
セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンの量が減少したり、

はたらきが低下してくると、さまざまなうつ病の症状が
あらわれるのではないかといわれています。

うつ病を放置するとどうなる?

うつ病は、自分で気づかないことがあります

うつ病は、風邪などのように「いつから始まった」という
具体的な日を特定することはできません。

いつの間にか、「以前と違う状態になっている」ことに
気づくものの、それがうつ病であるとは
自覚できない場合が多いようです。

特に働き盛りの世代では、
職場における過労やプレッシャーから
うつ病を発症する人が増えています。

うつ病が原因で気分が晴れず、集中力を欠いたり
仕事でミスを重ねているにもかかわらず、
「もっと頑張らねば」などと思い詰めてしまう人もいます。

このようにうつ病に気づかないまま放置すると、
症状がどんどんと悪化してしまうおそれがあるのです。

周囲の人が、うつ病のサインに気づいてあげてください

本人がうつ病を自覚していなくても、
周囲の人が「以前と様子が違う」「どこか変だ」と
感じることも多いようです。

職場においては仕事上のミスが多くなったり、
家庭においては元気がない、食欲がないなどの
サインがあらわれます。

好物だった食べ物にも食欲がわかなくなるので、
普段一緒に食卓を囲む家族にとっては
わかりやすいサインかもしれません。

なるべく早い段階で周囲がこれらのサインをキャッチし、
うつ病に気づいてあげることが重要です。

体の病気が原因となってうつ病になることも?

糖尿病や脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病、
がん、心筋梗塞や脳卒中の患者さんは
うつ病を併存しやすいといわれています。

病気そのものや治療薬の影響などで
脳の機能に影響を及ぼし、
うつ病を発症する場合もあります。

病気だから元気がないのだと、
見過ごされがちなだけに注意が必要です。

うつ病を発症するのはどんなとき?

ストレスが、うつ病発症のきっかけになることもあります

うつ病の発症には、ストレスが大きく関係しているといわれています。

「心が弱い人はストレスに弱いから、うつ病を発症するのではないか」
と考える人がいるかもしれませんが、ストレスとはそもそも
「心や体にかかる刺激や負荷」を指します。

つまり、人によっては思いもよらない出来事がストレスになるのです。

親しい人との死別や離婚、あるいは病気になるなどといった
悲しい、つらい出来事がストレスとなるのは理解しやすいと思われます。

しかし、それ以外にも昇進や結婚、こどもの独立など、
どちらかというと明るい人生の転機でさえストレスとなることがあるのです。

うれしい、明るい出来事もストレスになりえます

悲しい、苦しい出来事だけでなく、
喜ばしいことが原因となって
うつ病を発症するのはどうしてでしょうか?

環境の変化に対する受け止め方は、人によってさまざまです。

喜ばしい出来事であっても、それが急激な変化となって
自分の生活に影響を及ぼす場合、自分なりに考え、
対処することが難しく、それが大きなストレスとなって
うつ病発症の要因となることもあるのです。

いまの社会は経済やシステムの構造がめまぐるしく変化し、
日常生活のさまざまなシーンにおいて急激な変化や進歩に
対応しないといけません。

そうした社会背景が、うつ病の患者さんを
急増させているのかもしれません。

うつ病が発症するしくみ

ただの落ち込み?それともうつ病?

うつ病は、脳の働きに何らかの問題が起きて発症すると考えられています。

単に気分が落ち込んだ状態なのか、
それともうつ病であるのかは、
具体的な数値などではっきりと示すことは難しいのですが、
症状の程度や質、生活への支障の出方などで判断することができます。

それに、うつ病は心の症状だけではなく、
「食事がおいしくないし、つまらない。
『食べなきゃ』と思うけれど進まない…」

「いつもより早く目がさめるし、
寝ようとしてもなかなか寝付けない…」といった体の症状が
あらわれることもあります。

そのあらわれ方は、人によりさまざまです。

発症のきっかけはさまざま

その人自身の物事に対する考え方や生活環境、
日常生活において発生したストレスなどが
複雑にからみあって引き起こされると考えられています。

遺伝との関連も研究されていますが、
特定の遺伝子があれば必ず発症するというものでもありません。

なかには、うれしい、明るい出来事がきっかけとなって、
うつ病を発症することもあるのです。

うつ病が発症するしくみ

脳の中では、情報を伝達するためにさまざまな
神経伝達物質が働いており、そのうち
セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンは、
モノアミンと総称されています。

一説に、うつ病は、このモノアミンが減ることで
引き起こされるとされています。

しかし、これだけでうつ病が発症するしくみを
すべて説明できるわけではなく、ほかにもいくつかの説があります。

うつ病が治らない・くりかえすのはなぜ?どう対処すればいい?

うつ病の完治には時間を要します。

また、治ったと思っても再発することもあり、
治療期間が数年にわたることも少なくありません。

ここでは、うつ病が長引いたり再発したりする原因や
そういった際にどう対処すべきかについてまとめています。

うつ病は、きちんと治療を受ければ必ず治る病気です。

しかし、風邪のように「薬を飲んで熱が下がったから治った」と
簡単にはいきません。

個人差はありますが、半年~1年程度は治療を行うケースが多くあります。

なぜうつ病は長引くのか、また、どのような対処をすればよいのか、詳しく解説します。

うつ病が長引く・再発する原因

うつ病の治療には、薬を飲みながら病状を取り除いていく「急性期」と、
社会復帰に向けて以前までのペースを取り戻していく「回復期」があります。

薬物治療を行う「急性期」の間、患者は薬を飲み、
様子をみながら治療に励みます。

この時期を過ぎると、回復期に入るのですが、
この時期、病状は大きな波を描くように、
よくなったり悪くなったりをくりかえします。

このよくなった時期に「もう大丈夫だ!」と自分の判断で薬を飲むのをやめて、
社会復帰しようと考える人が少なくありません。

しかし、完全に回復したわけではありませんから、
再び抑うつ状態に入り、結果、うつ病が長引いたり、
再発させたりしてしまうのです。

長引かせない対処法・予防策

うつ病の治療中は、症状が改善されてもすぐに服薬を止めず、
しばらくは抗うつ薬を飲み続けることが大切です。これを「維持療法」と言います。

うつ病の患者は、早く社会復帰したい、早く治したい、と
強く思うものですが、うつ病から回復するには時間がかかるのが一般的です。

それを念頭に置き、焦らずじっくりと治療に向き合うことがなによりも大切です。

焦って無理をしたり、服用を止めたりすると、
症状がかえって悪化してしまったというケースが少なくありません。

再発を防止するにも、抗うつ薬を服用し続けることが重要です。

うつ病は2~3年以内に50~80%が再発するといわれているほど
再発率の高い病気です。

いったん症状が落ち着いたと感じても、
自己判断で服用や治療を中止しないようにしましょう。

うつ病治療では、周囲のサポートも欠かせません。

家族なら「本人がいちばんつらい」ということを理解して
本人がじっくり休養できる環境を整えてあげましょう。

職場の方なら、ゆっくり復帰していけるよう、仕事内容に配慮してあげてください。

うつ病の回復は一進一退です。

たとえ病状が再発しても治ることを信じて、
「あせらず」「あせらせず」の気持ちでいることが大切です。